
ペンションの車で東沢大橋まで送っていただき、川俣渓谷を下ることにする。目的は勿論、吐龍の滝。いきなり急な下り道。夫と二人慎重に足を運ぶ。斜面の木々の間から、遙か下で音を立てて流れている川俣川が見え隠れしている。木陰の道なので気持ちがよい。時々、名前の付いた小さな滝が見られ、小休止も楽しい。下るに釣れ、川との高低差も少なくなり、小さな橋を渡っては、右岸、左岸と歩く。途中、清泉寮へと抜ける登り道もある。九月に入り歩く人も少ないので道を間違えないよう神経を使うが、所々の石等に赤い印があり安心して前進できるのはありがたい。木陰が切れて陽当たりのよい場所では、ツリガネニンジン、ギボウシ等が目を楽しませてくれる。急斜面にはハシゴがかけてあり、ロープやチェーンも付いているので安全である。つかまって汚れた手を冷たい流れで洗い、ひと休みすれば汗も引っ込んでしまった。結構厳しい道を歩き続けて二時間半、ついに吐龍の滝が姿を現した。「わあーきれい」と思わず叫ぶ。それ程広くない川巾の対岸は、見上げる崖一面、ツワブキに似た「おたからこう」の黄色い花で飾られ、その間を湧き出た水が大小幾筋もの滝となっている。崖の巾が20メートル以上もあるだろうか、緑と黄色におおわれた岩肌を、生き物のように滝が音を立てて、しぶきを上げている様は美しく見事だ。
私がこの滝を訪れたのは過去二回。新芽の季節五月と緑濃い八月、そして今回九月。
紅葉の頃もさぞかしと思われる。ゆっくり休憩して滝をあとにするとまもなく、小海線の鉄橋をくぐる。やがて道は川から少し離れ、道幅もすれ違えるほどになり、黄色やピンクのツリフネソウが咲く平らな林の小道と変わる。そして十分も歩けば舗装された広い林道に出る。右に行けば甲斐大泉方面へ。私たちはやや近い清里方面に向かって左へ道をとる。時折聞こえてくる小鳥のさえずりに耳を傾けながら静かな林道を40分程下って駅に出る。
東沢大橋からこの林道まで歩き通したのは今回初めてであったが、なかなかスリルに富んだハイキングコースで、充実感がある。逆コースで登りの場合は、もう少し時間が必要かも知れない。(P.たん歩゚歩゚ご宿泊の小口様記)
川俣渓谷は黄色の多い八ヶ岳の秋の中で赤がとても美しい紅葉が見られます。吐龍の滝も苔の緑と白いしぶきに赤が映えて素晴らしい景色です。(編集部より)